金曜日、夜11時。見慣れた自宅のドアを開け、電気のついていない真っ暗な一人暮らしの部屋に帰る。
「ただいま」
とつぶやいてみても、それに返答する声はない。
今すぐにベッドに飛び込みたい気持ちをぐっと抑え、戦闘服と化した通勤服を脱ぎ捨ててメイクを落とす。
今日は金曜日。1週間の疲れを癒やすべく、久しぶりに湯船にお湯をはった。お気に入りのバスソルトを入れて、冷え切った体をあたためる。
ようやく一週間が終わった。今週も充実していた。

7年経っても満たされない毎日
大学卒業後に入社した会社で働き始めて、もう7年が経った。
もちろん仕事には慣れたし、仲の良い同期もいるし、上司との関係も良好。それなりに責任のある仕事を任されるようになって、最近は残業続きの毎日だ。
お金を稼ぐことは大変だけど、やりがいはあるし仕事は楽しいから辞めたいとは思っていない。

おそらく私は、傍から見たら充実した
「都会のキラキラ系OL」
ってやつなんだろう。
私自身もいまの毎日に不満はない。だけど、どこかで心が満たされないと感じているのも事実である。
なぜなら、30歳がすぐそこまできているのに、私は結婚できないから。
周りは当たり前の幸せを手にしている
新入社員として入社したのは、私を含めて女10人。
そのうちのひとりとは地元が同じだということもあり、親しくなるのに時間はかからなかった。
彼女とはランチで話題のカフェに足を運んだり、華金は大衆居酒屋で仕事の愚痴を言い合ったり。
週末にも2人でショッピングをして、同期というより心を許した親友のような存在だった。
そんな彼女は、つい2ヶ月前に寿退社をして会社を去っていった。
彼女の結婚相手は学生の頃から付き合っていた男性。彼女には悪いけれど、いたって普通のサラリーマンだった。
でも彼女にとって愛おしい存在であり、彼の愚痴を言っていてもどこかに愛を感じたのは間違いない。
プロポーズされたと私に報告してくれた彼女の目は、キラキラと輝いていた。
それもそうだろう。
長く付き合っていた彼氏が
「結婚を考えていないかも」
と悩んでいた彼女にとっては、2人の関係が一歩前進したわけだ。
彼氏・彼女から、夫・妻となる。大切な存在のパートナーとなれることに、喜ばない人はいない。
彼女はいま、彼と歩む未来への希望に溢れている。そしてその姿を見て、心からおめでたいと思ったのは本音。
彼女は仕事を辞めるつもりはなかったようだが、彼(夫と呼ぶべきだろうか?)が結婚を機に転勤となったため、ついていくことを決断したのである。
ゆえの寿退社。退社日に部署からもらった大きな花束を抱え、涙を浮かべながら感謝を伝える彼女は、
とても美しかった。
親友の結婚。
人生において、自分ではない誰かの幸せを喜べることは素晴らしいことだ。
だけど、ここでも私は、どこかでモヤモヤとした気持ちを抱いてしまったのである。
彼女に対して、憎いとか悔しいといった気持ちは一切ない。
ただ、私が憧れている”結婚”という夢をすんなりと叶えたことが羨ましくて仕方がなかったのだ。
黒く濁った感情ではなく、ただ純粋に羨ましかった。
「結婚式はお互い友人代表スピーチしようね!」
なんて言い合ったときは、遠い未来の話だと思っていたのに。
2人でひとつだと思っていた彼女と私は、どこで道が別れたのだろうか。

私も人並みの恋愛、人並みの人生
はじめての彼氏ができたのは、高校2年生の頃。
サッカー部の気さくで話しやすい男の子だったが、彼の部活が忙しくなったことですれ違い別れてしまった。
次の彼氏は、大学に入学してすぐにできた2つ上の先輩。
2歳年上というだけで大人に見えた彼の魅力にハマってしまい、バイトや授業をサボってまで会いに行った。
好きで好きで仕方なかったが、彼の自由奔放な性格と女友達が多いことに悩んで破局。
大学時代はその後も何人かと付き合ったものの、どの人とも長くは続かなかった。
それでも友達がたくさんいたキャンパスライフは楽しく、大学4年生の就活では「都会で働くOLになりたい!」という夢を掲げて見事都内の企業に内定。晴れて都会OLとしての道を掴んだのである。
憧れの都会OLになってからは、友達の紹介や合コンで知り合った人と良い感じになったけど、付き合うまでには至らなかった。
社会人3年目までに結婚したいと思っていた私は、
「次付き合う人と結婚する!」
と意気込んでしまい、付き合うことにも慎重になってしまったのだ。
そんな毎日を過ごしていたら、目標(?)にしていた社会人3年目なんて春一番のように過ぎていってしまった。
そんな中でも、1人だけ結婚を考えた人がいる。
出会いは社会人4年目のことだった。
彼は私の大学の友達の友達で、同い年。大学の友達に誘われたドライブにふと参加したら、彼がいたのだ。
彼に対して、初対面ではなんとも思わなかった。
ただ、類は友を呼ぶと言われているように、ノリが一緒で話しやすかったのは本当。彼と2人で会うようになるまでそう時間はかからなかった。
人生のパートナーと思える出会いから一転
私たちは都合の良い関係だったのだと思う。
居心地はいいけれど、あくまで”友達”という関係。私が男友達と2人きりで会おうが何も言わないし、もちろん私も彼がどこでどんな女の子と会おうが咎めない。
お互い
「付き合おう」
の一言を伝えることはなく、いつまで経っても友達以上恋人未満。
私はその関係に満足していたし、特に不満を感じることもなかった。ただなんとなく、この関係に終わりはない気がしていた。
同棲は都合の良い女なのか
そんな彼との関係が変わったのは、出会ってから4つの季節を過ぎた頃。
2人で目黒川の夜桜を見に行った帰りに、突然彼が
「一緒に住まない?」
と提案してきたのである。
葉桜になりつつあるソメイヨシノを眺めながら、他愛もない会話の一部であるかのごとく。
一瞬驚きはしたが、その提案を断る理由はなかった。
毎週のようにお互いの家へ遊びに行っていたし、2人で旅行に行ったりもしたし、周囲から見れば”カップル”と呼ばれるような関係だっただろう。
「彼の恋人になる」
と言われれば少しむずがゆいが、
「彼のパートナーになる」
という表現ならしっくりきた。恋人にはなれないけど、家族にはなれそう。彼から同棲の提案をされたとき、私はそう思った。
実際に一緒に住んでみても、とくに問題は起きなかった。
居心地の良さは変わらないし、家事の分担もうまくいっていたし、休みが合えば旅行やドライブデートに出かけた。
「付き合ってください」
という一言もなしにはじまった同棲だけど、私たちにそんな言葉はいらない。
家族として、人生のパートナーとして、彼と生きていく。
おそらく彼も、私に対してそう思っていただろう。お互い口にはしなかったけれど、いずれ同じ名字を名乗ると考えていたと思う。
寿退社をした同期の親友からも
「結婚はもうすぐだね!」
なんて言われたっけ。

「結婚してください」
などの言葉は、やはり節目には大事な言葉になります。

いつでも終わるリスクのある関係
同棲生活は楽しく、日々結婚へ近づいていることを疑わなかった私。しかし、そんな平穏な毎日は、彼の一言であっけなく終わった。
「好きな人ができてしまった。同棲を解消してほしい。」
いつもどおり2人で一目惚れして購入したダイニングテーブルに座り、いつもどおり私が作った彼の大好物のドライカレーを食べながら、彼は言葉を放った。
同棲をはじめて8ヶ月が過ぎた頃だったと思う。
彼は気まずそうな顔をしながら、ぽつぽつと言葉を紡ぐ。
当たり前が当たり前でなくなるのなんて、ほんの一瞬の出来事である。
私は幸せの上にあぐらをかいていたのだ。この幸せな日常は、当たり前に明日も訪れると。
一人暮らしは自由で楽しいが寂しさが大きい
2人で住んでいた2LDKの家は、1人で住むには広すぎる。
だから彼が出ていくのと同時に、私もすぐに引っ越した。オートロック付きの1LDK。防犯面を考えて、ちょっと家賃が上がったけど2階の部屋にした。
1年ぶりの一人暮らしはとにかく自由に溢れている。
好きな時間に起きれるし、自分の大好物ばかりを作れるし、朝方まで飲み歩いても何も言われない。
私がどんな生活をしようと咎める人はいないフリーダムな毎日。
だけどそんな毎日は、私には寂しくて仕方がなかった。
「人は支え合いながら生きていく」
という言葉が、私の胸に刺さって抜けない。
一度2人で生きる人生を知ってしまうと、もう1人で生きていくことなんて考えられなくなるのだ。
ずっとずっと憧れていた結婚が目の前にあったのに、手に入らなかったのはなぜだろう?
彼も私と一生をともにすると思っていたのに、どうしてほかに好きな人ができてしまったのだろう?
どれだけ考えても、人の本心を知ることはできない。
ましてやもう赤の他人となってしまった彼の気持ちを知る権利など、私にはない。
30歳目前で結婚できずに焦る気持ち
寿退社した親友の結婚式に参列する頃、私は30歳を迎える。
彼女と約束した友人代表スピーチはもちろん私。オーガニックシャンプーの香りがする髪の毛を乾かしながら、彼女との思い出をひとつひとつ思い出してスピーチの内容を考える。
「社会人3年目までに結婚する!」
なんて言っていた頃の私を、はるかの昔のことに感じてしまう。好きな人と付き合って、好きな人と結婚する。
彼女が手にしたその人生を、私が手に入れられる日はいつ来るのだろうか。
曇り空みたいにどんよりとした気持ちを抱えながら、私は今日も、繰り返す日常へ一歩を踏み出す。
20代後半女性が結婚に焦る物語のまとめ
恋愛経験は人並みにある。
見た目も悪くないどころか、割とモテ系で自分に自信があり、仕事もできるし友達も多い。
そんな彼女でもタイミングのズレや、判断ミスで結婚できずにもがき苦しむ事があるのでしょう。
そうやって結婚できない苦しさを感じている人は、沢山いるはずです。
すぐに現状を変えたい。
結婚に対して本気の男性と出会いたい。
そう考えているなら、合コンや飲み会よりも、婚活をしてみると簡単に高スペックで相性が良い男性と出会ったりするものです。
好きな男性ができれば、今まで悩んでいた将来への不安、結婚できない劣等感、一人の寂しさなど、いつの間にかその存在さえも忘れ去ってしまうことでしょう。
好きな人が存在することは、素晴らしいことですよね。
婚活にいおてスピード重視するなら結婚相談所。
じっくり自分のペースで相手探しするなら、婚活アプリやマッチングアプリなどのネット婚活を使い、キラキラした幸せな将来になるよう、頑張るしか無いと思います。